過払い金請求は誰にでもできる?
過払い金請求ができるのは本人か代理人
借金の返済期間が長かった人の場合、過払い金が発生しているケースがあります。中には、弁護士に過払い金請求を依頼して、100万円以上ものお金を取り返すことができたという人もいます。そして、弁護士費用がなければもっと多くの金額を手にすることができたのではないか?そう考える人もいるでしょう。
そこで気になるのが、過払い金請求は弁護士に頼まなくてもよいのか、誰にでもできるのかという点です。まず、過払い金を請求する権利は、借金をして、その返済を行っていた本人に発生するものです。したがって、第一に過払い金請求を行えるのは本人ということになります。
同時に、民法では代理という行為が定められています。一般に、本人が行える法律行為は、他人に代理させることができるのです。過払い金請求も法律行為のひとつであることから、この代理制度の対象になります。結論として、過払い金の請求は、本人ができるのはもちろんのこと、代理人もできるということです。
弁護士法や司法書士法に注意
さて、過払い金請求をすることは、本人だけでなく代理人にもできるわけですが、そこにはひとつ注意点があります。業として代理をする場合、弁護士法や司法書士法の規定が関係してきます。
過払い金請求において業として代理をするというのは、簡単にいえば、報酬を得て過払い金請求の代理人になることです。弁護士法72条では、弁護士と弁護士法人以外の者が、報酬を得る目的で、条文に列挙されている業務を行うことを禁止しています。
条文に過払い金請求という文字は書かれていませんが、禁止されている業務のひとつです。例外としては、司法書士法に定められた認定司法書士の代理権があります。つまり、弁護士や司法書士ではない者が過払い金請求の代理人になる場合は、無報酬であることが前提です。
過払い金請求の現場は知識と経験がモノをいう
過払い金請求の根拠と正しい計算
過払い金請求は、本人だけでなく代理人でも行えるものですが、それは請求してもよいという意味であって、請求の結果を保証するものではありません。過払い金請求を行うにあたり、納得できる結果を得るために最低限知っておくべき事柄のひとつが、過払い金請求の根拠です。そして、請求する数字の計算が正しく行われている必要があります。
なぜなら、請求する相手は海千山千の貸金業者の担当者だからです。乏しい知識と間違いだらけの計算では、足元を見られるリスクが考えられます。
過払い金請求を可能にするのは、約定利率が利息制限法の上限を超えており、長期にわたり返済した結果、返済総額が法定の金額を超えていた場合です。そして、利息制限法の上限利率は、以下のようになっています。
- 元本10万円未満の場合は年利20%
- 元本10万円以上100万円未満の場合は年利18%
- 元本100万円以上の場合は年利15%
次に、たとえば100万円を借りた場合の上限利率は15%ですが、25%もの高利で借金していた場合、その差は10ポイントです。わかりやすく毎年利息だけ払ったと仮定しましょう。1年後には25万円を払うため、上限利率との差額は10万円です。2年後も同じく10万円の差が出ます。ここで元本も一緒に返済すれば、トータル返済額は150万円となります。
この場合の過払い金を、10万円2回で20万円だと考えると失敗します。実は、1年後の差額10万円は元本の返済に充当されます。そのため、2年後の利息計算のベースは100万円ではなく90万円です。90万円の15%は13万5,000円となり、過払い金は21万5,000円となるのです。
業者によってやり方も変わる
過払い金請求をする側から見た場合、相手方の貸金業者がどこであろうと同じに思えるかもしれません。払い過ぎたお金を返してもらうだけだという観点からはそうなります。しかし、それが落とし穴になり得るのです。
相手方には経営状態が磐石といえるような企業もあれば、資金繰りに窮している企業もあるのが現実といえます。実際に、経営破たんしてしまい、過払い金請求が絵に描いたモチになってしまった武富士のようなケースもあります。
また、過払い金請求に対する姿勢も業者によってマチマチです。さらに、同じ業者であっても過払い金請求をしてくる相手によって対応が変わることまであります。こうした業者ごとの特徴は、過払い金請求の経験が豊富な人間でなければわからないものです。
しかも、直接の交渉には応じず、裁判を前提とする業者もあります。このような事情があるため、下手をすると思ったような結果を得られない事態に陥りかねません。しかし、過払い金請求の経験が豊富な弁護士なら、より的確な判断と行動が可能でしょう。
過払い金請求にはこれだけのポイントがある
手続きにかかる時間
過払い金請求は、直接交渉で解決する場合でも書類の準備や相手方とのやりとりに時間を要する手続きです。一度に長時間を裂く必要はないでしょうが、忙しいと煩わしく感じることがあるかもしれません。
交渉力
一般に、過払い金請求でお金を返してくれといっても「はいわかりました」と返還されることは考えにくいことです。また、請求金額についても全額で合意できるとは限りません。過払い金をより多く、しかも迅速に取り戻すためには、それなりの交渉力が必要だといえます。この点でも優れているのが経験豊富な弁護士です。
判例知識
過払い請求で問題になる点に、分断や時効があります。分断とは、ある期間の取引を一連のものではなく、途中で終った契約と、その後の新規契約とに分けて考えることです。分断することで、古い契約が時効になってしまったり、過払い金の額が減少したりします。
請求する側としては、こうした事態は避けたいものですが、そのためには判例知識が必要です。日々、過払い金請求を行っている弁護士ほどの知識を持っている人が他にいるでしょうか。
訴訟対応
過払い金請求では、任意の和解だけでなく請求訴訟によってお金を取り戻すケースが珍しくありません。請求訴訟とは、簡易裁判所か地方裁判所に訴えることです。訴訟対応には専門的な知識が必要になります。訴訟といえば、一般に思い浮かぶのは弁護士の存在でしょう。
過払い金請求を弁護士に頼むべき人とは?
ここまで見てきたように、過払い金請求は、知識や経験に加えて交渉力が重要となる手続きです。第一段階である引き直し計算を行うには、取引履歴が必要になります。手元に資料がない場合は業者に開示請求をしなければなりません。
しかし、業者の中には、本人や素人の代理人による請求には、送付まで時間がかかるなど対応が悪いケースがあります。このような業者が以後の手続きに協力的になるとは考えられません。
それも踏まえて、時間や知識、交渉力、訴訟対応などに問題がないと言い切れる人であれば、本人でも素人の代理人でも構わないでしょう。
しかし、どれかひとつでも不安がある場合は、弁護士に依頼すべきだといえます。弁護士なら、開示請求や引き直し計算をはじめ、タフな交渉と過払い金の回収までお任せできます。方針が決まったら、連絡を取りつつ結果が出るのを待っていればよいので楽チンです。
中には、まずは本人が過払い請求をして、ダメなら弁護士に依頼すればよいという考え方もありますが、あまりおすすめできません。はじめから弁護士に依頼する場合に比べて、損をする可能性があるためです。たとえば、弁護士に依頼しておけば取れた金額よりも少ない金額で和解してしまうなどです。
ちなみに、司法書士が扱えるのは簡易裁判所管轄の事件に限られています。そのため、金額が140万円を超える場合や、訴訟となって控訴審にもつれ込む場合は守備範囲外です。
最後に、弁護士を選ぶ際は、過払い金請求の実績を重視しましょう。