悪意の受益者とは?
過払い金の返還請求を行うためには、さまざまな知識が必要となります。知っておきたい知識の中に「悪意の受益者」という言葉があります。過払い金の利息分を請求するために必要な知識、悪意の受益者について知っておきましょう。
悪意の受益者は過払い金に5%の利息を上乗せして支払う
過去の判例により、過払い金には、過払い金が発生したときから返還されるまで、年5%の利息が付くとされています。つまり、貸金業者に対しては、過払い金に対して発生した利息を上乗せした金額を請求することができるということです。この過払い金の利息を支払う義務を負うのは、「悪意の受益者」に限る、とされています。
不当な利息と知りながら貸していた貸金業者
悪意の受益者とは、利息制限法に違反した不当な利息であると知りながら、債務者から利息分の支払いを受けていた貸金業者のことをいいます。
悪意という言葉が入っているので、「相手を騙してやろう」などといった、悪い感情を持って貸付を行った者をいうのか?と勘違いしてしまうかもしれませんが、そのような感情の面が問われることではありません。この場合の悪意とは「知っていた」ということを指します。
そういったことから、過払い金が発生する違法金利で貸付を行っていた業者は、ほとんどが悪意の受益者であるとみることができますし、実際、多くの裁判で貸金業者は悪意の受益者であると認められています。さらに最高裁判所での判例もあることから、貸金業者が悪意の受益者だと認められないことは、ほとんどないといえます。
悪意の受益者とみなし弁済
貸金業者が悪意の受益者に反論する場合、悪意ではなく「善意の受益者」であると主張することになります。善意であると主張するには、悪意の受益者とは反対に、「知らなかった」ことを裁判所に認められなければいけないことになり、その際にみなし弁済であったとの主張をしてくる可能性があります。
みなし弁済とは?
現在は撤廃されていますが、旧貸金業規制法には「みなし弁済」という規定がありました。みなし弁済とは、成立にはさまざまな要件がありますが、成立が認められると、利息制限法に規定されている金利を超える利息を貸金業者が受領したとしても、それが認められるとされる規定です。
そのため、みなし弁済が認められると、本来返還されるべき過払い金であっても、返還されないといったことになります。貸金業者の主張として、自分たちは悪意の受益者ではなく、みなし弁済だと思って利息分の支払いを受けていたのだから、善意の受益者なのだということになります。
みなし弁済を主張してくる業者も?
過払い金であっても貸金業者が受領することを認めてしまう規定である、みなし弁済ですが、現在は撤廃されています。また、裁判においても、業者のみなし弁済だとする主張が認められることはほとんどありません。しかし、業者側が悪意の受益者ではないと主張するために、このみなし弁済を持ち出してくる可能性はゼロではありません。
そういったことから、過払い金請求を行う際や過払い金で利息請求をすると考えているのでしたら、みなし弁済についても知っておく必要があるのです。
悪意の受益者とならないこともあるの?
過払い金の利息請求における、悪意の受益者の悪意とは、「知っていた」ということを意味します。そういったことから、「知らなかった」場合は善意となりますが、この場合の悪意には、さらに「知るべき」といった意味も含まれていると考えられています。
つまり、貸金業者がお金を貸し付ける場合に、利息制限法について知らずに貸し付けることはない、知るべきであるといった意味も含まれているのです。
みなし弁済が認められることもほぼないことも合わせて考えてみても、貸金業者が善意の受益者だとされることは、ほとんどなく、多くの場合は悪意の受益者だとみなされるので、過払い金に利息を請求することが可能だといえるのです。
過払い金で利息請求するためには?
裁判でも多くの場合認められる過払い金の利息請求ですが、判例で多くが認められているとはいっても、単純なものではありません。業者側は素直に応じずに反論してくる可能性もあり、請求するためには法的な知識が必要になってきます。
必ず利息上乗せで請求できるわけではない
裁判では、ほとんどの貸金業者は悪意の受益者であるとされることは事実ですが、実際に過払い金請求で利息分も請求したとしても、必ず利息分も一緒に支払いを受けられるわけではありません。
長い支払い期間を経てきた方は、貸金業者との取引期間が長くなれば長くなるほど、過払い金も多く支払ってきたことになり、さらに過払金を元本とする利息の支払いも高額請求できることになります。その金額は、貸金業者の経営状態によっては、大変大きな負担となる可能性があります。
そういったことから、5%の利息分を請求することが難しくなる場合もあり、交渉によっては利息分の請求を減額することになる場合や、過払い金元本だけの支払いで和解しなければいけなくなる可能性もあります。
判決では認められるが得策ではない場合も
過払い金の利息請求は、裁判の判決では多くの場合、業者側の支払いを認める判決が出されています。裁判の判決を待てば支払いを受けることはできると考えられますが、それが得策ではないといったこともあります。
例えば、業者側がみなし弁済を主張してくるなど、裁判が長引いてしまう場合、または、業者が倒産の危機に陥ってしまったり、倒産してしまったりした場合は、過払い金の支払い事態が困難になってしまうことも考えられるため、裁判で判決を受けることよりも5%を3%にするなどを和解とした方が良いこともあります。
過払い金の利息請求を行う際には、請求相手の経営状態なども考慮するなど、さまざまな点を良く吟味して交渉する必要があり、しっかりとした法知識が必要となってくるのです。
過払い金の利息請求は信頼できる専門家に相談を
「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」という民法の規定により、悪意の受益者に対して認められている過払い金の利息請求。過払金が発生している方には、当然認められている権利ではありますが、請求を行う際には、注意したい点がいくつかあります。
悪意の受益者やみなし弁済などの知識をしっかりと
過払い金の請求をする方が増えてきたこともあり、貸金業者側も過払い金の支払いを多く抱えているといった現状があります。そのため、過払い金の利息請求の訴訟を起こした場合、業者側はみなし弁済が認められることはほぼないとしても、対抗するためにそれを主張してくる可能性はあります。
過払い金の利息の支払いを求めるのなら、業者側の主張を崩すだけの主張をこちら側も行わなければいけないため、しっかりとした知識を持って反論する必要があります。
専門家へ相談するのがやはり安心
ご紹介したように、過払い金の利息請求は、決して単純な請求ではありません。貸金業者との話し合いや、裁判でも和解によって取り決めをされることが多く、できるだけ不利にならないよう交渉するだけの知識が必要とされます。
また、裁判中に相手方が倒産してしまえば、支払ってもらえる金額も減ってしまうため、請求相手の経営状態なども把握しながらの主張になり、見極める目も必要となってきます。そういったことから、過払い金の返還請求、さらに過払い金の利息請求においても、できるだけ専門家の力を借りながら行うことがおすすめです。